Index
- 1月 シンポジウム「モノを残すことの価値を考えるアーカイブ研究会」
- 2月 「秋田公立美大がNFTはじめたってよ」動画公開
- 3月 持続可能なアートプロジェクトのための人材育成研究会
- 4月 ハラスメント・ガイドラインづくりのための社内研修
- 5月 4館連携 フリー・オープン・デイ2025
- 6月 文化創造館ショップ「〇HAJIMARU」 レイアウト変更
- 7月 米野塩松さんに学ぶ「聞き書き術」
- 8月 民具ラボ 第3回分類整理活動
- 9月 舞台芸術国際共同制作プロセスオブザーバーに協力
- 10月 秋田県内で熊の目撃が相次ぐ
- 11月 能代市「広報のしろ」で連載企画「Echoes of Time」スタート
- 12月 秋田市文化創造館が「地域創造大賞」受賞
- 番外編
アーツセンターあきたの理事長・藤浩志と、事務局長の三富が、アーツセンターあきたのことを中心に四方山話を繰り広げる不定期のトークシリーズ「藤さん、今からちょっといいですか?」。収録方法を毎回実験しつつ、三富が勝手にテーマを設定し、藤に問いを投げかけるスタイルで進行します。
第4回目は激動(!?)の2025年を振り返ります。
三富
今年もいろいろありました。せっかくなので、振り返る機会があればいいかなというふうに思いまして。1月から12月までのトピックスを厳選して書き出してみました。この中から、藤さんのが気になったものを拾って、深く話せればなと思っています。
藤
本当にあっという間だよね。秋田に来て11年経って、3月で秋田公立美大を退任する。この話はよくしてるけど、大体いろんな場所に3年ぐらいいるつもりでいて。それは、3年ぐらいはいないと何か形にならないなみたいな感じなんだけど。十和田(市現代美術館)は4年関わり、その途中から秋田に関わり、 秋田も3、4年ぐらいかなと思ってたんだけどね。 アーツセンターあきたをつくって、大学院もできて、修士課程に加えて博士課程もできて。文化創造館の指定管理が決まったとき、やっぱりちょっともうひと踏ん張りみたいな。そして、気づいたら定年が近づいてきたから、最後までいるかみたいな感じがあったような気がするんだよね。
三富
3年に1個ずつ、何か大きな出来事が起こってますね。
藤
僕が深くかかわったというよりも、文化創造館とかアーツセンターあきたの事業として、持ち込まれて関わっていったということが多いのかなと思っている。本来は自分自身で何かを企画してつくる、事柄をおこしていくことをやりたいと思いつつ、振返ってみると、秋田に来たり、秋田公立美大に来たり、NPO法人ができたりとか、思った通りにはならないよねというのが正直な感想。
三富
自分の意思とは違うということですか?
藤
そう。自分の意思とは違うところで動いていくけれど、それも面白いんだよね。自分の意思ではないけれども、持ち込まれるプログラムとか、出来事は、他人事ではないような気もする。自分の活動の延長にあることだし、なおかつそこから何ができるだろうっていう期待感がすごくあるみたいな感じだったんですね。
1月 シンポジウム「モノを残すことの価値を考えるアーカイブ研究会」

藤
「モノを残すことの価値を考える」というのはとても重要で、まだまだ解決はしてない。シンポジウムを経ていろんな問題意識が明らかになっていって、これをもうちょっと深く、長く考えていかなきゃいけないと思ったよね。今の世の中の共通の課題としてあるということが見えてきた。
三富
タイミングとしても、博物館の収蔵庫問題っていうのが全国的に議論され始めたのと同じぐらいの頃から、私たちも油谷さんのことに関わりはじめていますね。
藤
写真に写ってる文化創造館のスタジオA1は昭和42(1967)年にできた空間。1世代前、2世代前ぐらいにできていて、この時代は物がどんどんつくられ、美術作品もつくられていって、美術館や博物館ができて収蔵していった。当時は収蔵庫がいっぱいあって。だから、日本の中では数世代前までは価値のあるものを収蔵していって、次の時代・世代に繋いでいくというより、循環していってた時代だったと思う。時代を経て、今は次の世代にどう繋いでいくのかっていうのが課題になってるっていうのは、すごくわかりやすい。 文化創造の裏側にある、創造されたものをどうするか問題というか。
三富
そうですね。それはゴミなのか、価値なのかという問いがある。
藤
価値というのは、誰かが関わらないことには出てこない。ただ収蔵してるだけでも意味はなかなか見いだせないし、それをどう開くのかとか、どう次の世代に繋がっていくのかっていうのを考えなきゃいけない。その手法も、1世代前まではデジタルでアカービングなんていうのはほとんど考えられてなくて、写真とフィルムだったんだよね。 写真とかフィルムは、まだ「物」だもんね。 それがデジタルになっていって、今からどうしようっていう。いっぱい課題が見えてきたシンポジウムだった。
2月 「秋田公立美大がNFTはじめたってよ」動画公開
三富
2月はNFT事業をはじめたことについて、藤さんと私で放談した動画を公開したという。NFTの事業は、やらねばならないという状況からスタートしたんですが・・・
藤
誰も興味を持たなかった。
三富
そうでしたね。でも嫌々やらされるということではなくて、なぜ私たちは取組むのか、可能性をどこまで深読みして、着手したかっていうのを説明しようと思って動画をつくってみました。ここからNFT事業はまた新しい展開をしてますし、動画は動画で、シリーズ「藤さん、今からちょっといいですか」へと展開しています。
藤
こういう技術は、30年でガラッと変わるんだよね。NFTが出てきて、まだ10年くらいかな。まだ過渡期ではあるし、ここら先、どうなるかだよね。 ここから先を考えたときに、まだ表現の一つみたいにはなっていないと思うんだけど、さっきのシンポジウムのテーマにあるように、ものの残し方とか価値のあり方にも通じるように、所有の履歴をつけていく可能性や、どうやって分配して所有するかとか、新しい仕組みや可能性が見えてくるんじゃないかと思う。やってみないとわからない。
あと、大学として、アーツセンターあきたとして、何かに取組んでやろうとしているっていう態度を見せているのが重要な気がしてる。何かやろうとする、何かに取り組む態度が周りには必要だよね。作家にとってもそうだし、何かをつくっていこうとしている人たちにとっても、それが一番大事だという気がするね。
3月 持続可能なアートプロジェクトのための人材育成研究会

藤
これは自主企画だよね。
三富
文化創造館の事業として、芦立さんが中心になってやっています。
藤
人材育成はやらなくてはならないこと。三富さんは、トヨタアートマネジメント講座はリアルタイムで知らないよね。
三富
リアルタイムでは知らないですね。
藤
トヨタアートマネジメント講座は、90年代半ばぐらいからだったと思うんだけど、あの視点はすごく重要だった。マネジメント人材が育たない限りは、文化創造なんてあり得ないし、つくり手は育たない、活動の担い手、プレーヤーは育たないと思うんだよね。 いろんな現場で活動が発生するためには、施設の運営管理や条例の制定を含めてだけど、マネジメントの存在が重要。あらゆる現場にいる人たちが、研究会みたいな形でやっていくっていうことが大切だろうなと思うよね。
三富
理想を言えば、マネジメント人材を育成する課程をもつ大学と、実践の現場がもっとつながっていくといいなとも思っています。秋田の場合は、近くにマネジメント系の大学がないので、そういう感覚を持つのかもしれないですけど、現場と教育の循環がもっとうまくいくと理想的だなという気がして。どうしても、卒業後に放り出された現場で、ひたすら事業をまわすという良く言えば「OJT」で、なかなかノウハウが蓄積しないという課題があるように思っています。今回の研究会では、まずは横でつながって、課題の共有とか、ノウハウの共有からはじめましょうということを3月からスタートしています。
藤
これ何回ぐらいやったの。
三富
まだ3月に1回。今年度中には、もう1回予定しています。この機会があったことで、秋田と青森と京都、札幌、仙台で、文化施設に勤務する役職者と、現場のスタッフとが、顔が見える関係性が築けた。小さなことですが、お互いに同じような課題認識を持ってることが共有されたことだけでも、安心感を得て、一つ前進したようにも思います。
藤
僕は、昔から取手アートプロジェクトの出身者と現場で出会うことが多い。東京藝術大学の熊倉先生のところを出て、卒業後現場に放たれているけど、その時のつながりがいきていて、バラバラな場所で働きながら、ネットワークができていて情報交換しているようなところがあると思うんだよね。
三富
なるほど。つながっている人はいるんですね。
藤
関西のいろんなプロジェクトで繋がってたりもする。今は、施設の横串みたいなのがないっていうことなのかな。あと、秋田市内の人たち集めて、マネジメント人材育成講座みたいなのやっていなかった?
三富
あ、「もちつもたれつ大勉強会」ですね。
藤
大勉強会か。あれも、人材育成みたいなものだよね。
三富
言われてみればそうですね。もともとは、文化創造館には場所とか資金とか、仲間とかを求める活動したい人が相談にきます。それだけではなくて、そういうリソースをもっている自治体の人とかも、活動者となかなかつながれないという相談も寄せられて。だったら、つなぐ場をつくればよいではないかと思ってやったのが「もちつもたれつ大勉強会」でした。実際やってみたら、活動している人同士や、リソースをもっている人同士のつながりもできたりして、人材育成の側面もあるといえばあるかもしれません。
藤
あと、このこの話もよくするけど。施設に勤めると、新しい活動に向き合ってそれをマネジメントしなきゃいけないから、それまでやってきた経験値っていうのが、どこまで次にいかされるかって難しいところがあるよね。常に違うことが行われるし、時代は変化していくから、それにどう対処、対応していくのか。その上で柔軟性が必要だよね。
4月 ハラスメント・ガイドラインづくりのための社内研修

三富
3月の人材育成につづく形ですが、4月はハラスメント研修を開催しました。この研修で出た意見をに反映して、ハラスメント・ガイドラインとして9月に公開しました。
藤
これは本当によくやったし、ありがたいこと。これができたきっかけはいろいろあるとは思うけれども、自分たちで自分たちの組織をどう運営していくのかっていうことに対しての自覚みたいなものも生まれるだろうし。
三富
この写真は研修当日のものです。研修の前には、社内で有志を募ってガイドラインをまとめるチームをつくってたたき台をまとめ、それを壁に貼りだして全員で眺めながら「わからないこと」「提案」などをコメントし、ディスカッションをするということをやりました。実際、たたき台をまとめる時からスムーズにはいかず、こういう研修を全社的にやるのは大丈夫かという不安はあったんですけど、当日の雰囲気がめちゃくちゃ良くて。
普段社内では、年長者と若手とハラスメントに対する概念が違うっていうのを何となくお互いにわかって、年長者は「ここまで言ったら言い過ぎじゃないか」と抑制してしまうことがあって、それがコミュニケーションの乖離を生んでいたと思うんです。でもこの会では、たたき台をベースとして意見交換ができたので、あまり遠慮したりすることなく、結構率直にどう考えてるかっていうのを話し合えたのが、いい雰囲気を作れた要因かなっていうふうに思ってます。
藤
時間がかかったけれど、ガイドラインとして公開して、それを元にまた次のコミュニケーションができる。
三富
続けていくことを大切にしていきたいと思っています。
5月 4館連携 フリー・オープン・デイ2025

三富
ゴールデンウィークの恒例企画となったフリー・オープン・デイ。今年は周辺の公立文化施設と連携して開催しました。
藤
実は、フリー・オープン・デイ、参加できていないんですよね。見れていないけれど、皆、楽しんでいるでしょ。
三富
楽しんいます。今回は、周辺の施設、文化創造館含めた4館が連携して開催しました。今も継続して情報交換を施設間でやってるんですけれども、スタッフの間にすごくいい関係性ができていて、連携していて良かったなという実感があります。そして、連携の成果が如実に出たのが、秋の熊騒動のときだなと。警察より、クマダスよりも早く出没情報をいただいたり、「うちはこういうふうに対策しようと思ってます」みたいな情報交換ができたのが、心の支えになりました。日頃のご近所づきあいの大切さが身に染みて感じました。
藤
フリー・オープン・デイは、それぞれできる範囲でやるっていうのでいいんじゃないかな。妙にイベント入れるとかじゃなくて。来年は佐竹史料館もはいって、連携先が増えていくといいね。
6月 文化創造館ショップ「〇HAJIMARU」 レイアウト変更

三富
6月は、アーツセンターあきたが直営する文化創造館内のショップの空間リニューアルです。藤さんにつくってもらいました。
藤
これは楽しくつくらせていただきました。このきっかけは何だったんだっけ。
三富
文化創造館は21時まで営業しているけれど、ショップは18時閉店で、空間の仕切りはベルトパーテーションでやっていたのを、安全上問題があるのと、スタッフが重たいパーテーションを10本くらい立てていくのに時間がかかるという課題がありました。
藤
これレイアウトを変えて、お客さんはそんなに増えてない?売り上げを見るとそんなに響いてないようだけど。
三富
売上には直結していないですが、スタッフの業務効率は爆上がりです。
あとは、こんなにあっさりと物がつくれるんだというのを目の前で見れたというのは、スタッフにとっても刺激になったと思います。
7月 米野塩松さんに学ぶ「聞き書き術」

藤
これは本当に良い企画だったね。
三富
聞き書きの専門家で秋田在住の米野塩松さんを講師にお招きして、聞き書き術を学ぶという講座でした。藤さんにも聞き書きされる立場でご協力いただきました。
藤
意外とこういうことを大学の授業でもやっていなかった。 やっぱり市民の活動とか、文化創造館を利用して活動している方たちが、自分の活動をレポートしたり、レビューしたりするのは重要だと思うんだよね。テキストを書くことを活動する人たちがやっていかないと、残らないし分からない。何をやったかがわからないと、次に繋がらないから、本当はこういう書くということが大切。そういう方向性に繋がっていくといいなと思う。
8月 民具ラボ 第3回分類整理活動

藤
蒐集家・油谷満夫さんの未分類・未整理の収集物を分類整理するこの活動も第3回目。倉庫からそんなにたくさん持ってこないようにしようと思ってたつもりだったのに、広げたらそれなりの量だった。
三富
油谷さんが、あとから足してましたからね。
藤
これも、いろんな意味で可能性があるし、それを3回もやっていると、だんだん文化創造館がなんかやっているなっていう感じがでてくるよね。僕が、これがいいなと思ってるのは、この文化創造館の2階の立派な空間は展覧会にはちょっと使いにくいんだけど、このプログラムはあくまで分類整理で、作業するために物を広げると、意外と展示空間として面白くなるというところ。この空間全体を使うことの贅沢さの中に、民具が広がるという面白さがある。
あと500回くらいできる分量があるよね。プロジェクトは「1000分の1」というコンセプトで始まっているから、1000回はできる。
三富
3回終えたから、残り997回ですね。
9月 舞台芸術国際共同制作プロセスオブザーバーに協力

三富
これは国際交流基金の主催事業に協力するものです。三陸を拠点とする《みんなのしるし》という団体が主宰して、日本とインドネシア、台湾のアーティストが参加して舞台芸術作品を制作し公演するんですけれど、その制作過程をオブザーブして、レポートするという事業です。アーツセンターあきたから、白田さん、秋田公立美大の博士課程に在籍されている文化人類学を専門とする津田さん、根子集落を拠点とするマタギで写真家の船橋さんの3人で即席のコレクティブをつくって関わっていただいています。
藤
これはまた面白いプログラムをやったなっていう。一歩踏み出したな、という感じだよね。
三富
私たちは日頃秋田で活動していて、秋田を拠点とする面白いクリエイターと出会っている。そういう人たちが秋田の中で活躍するだけではなくて、もうちょっと違う場面で、秋田で培われたメソッドとか視点とか表現方法みたいなものをいかすフィールドを切り拓いていくことが、今後アーツセンターあきたとしてできればいいなと思っていました。この企画はその1本目という感じです。
藤
こういう活動が必要だよね。これは何らかの形でレポートが公開されるんだよね。
三富
今後ウェブサイトや報告書という形で公開されていきます。詳しくは公開されたものをご覧くださいという感じなんですが、私自身はこの3人がどういうやり取りをしてレポートをまとめあげているかという裏側も垣間見る機会があって、とにかく面白いということだけお伝えさせていただきます。
藤
どう考えても面白いでしょ、この3人は。
三富
乞うご期待です。
10月 秋田県内で熊の目撃が相次ぐ

三富
10月に入ってから、アーツセンターあきたや文化創造館だけではなくて、秋田県内全域で熊の目撃が相次ぎました。
藤
非常事態だったよね。コロナ以上というのか。コロナの時は、玄関から外に出るときに恐怖を感じることはなかったけれど、玄関から一歩出る時に出くわさないか、駐車場まで行く間大丈夫かとか不安になったよね。実際、10月25日に佐竹史料館がリニューアルオープンした時に千秋公園に行って、その後歩いて文化創造館に向かう時に「なんかいそうだな」って思ったんだけど、ちょうどその頃に公園内で目撃情報があるという。
三富
ニアミスだった。
藤
これがどうなっていくのか。数年前に熊の目撃情報があっても、どこか他人事みたいな感じがあったんだけど、全国的に広がって、今年の漢字に選ばれるくらい。その背景にあるのが、森や山と人との関わりの変化だよね。
三富
この状況をうけて、12月に文化創造館で熊と人の共生をテーマにしたトークをやりました。そこに来ていただいた専門家の方によれば、これは数年前からという程度の傾向ではなくて、30年前から予見されていたことだという。里山が崩れて、温暖化で木の実の豊作と不作のサイクルが崩れて。
藤
今年だけの問題ではないという。今後も、まちづくりや都市づくりだけではなく、生活そのものをどうしていくのかを考えていかなくてはならない。
11月 能代市「広報のしろ」で連載企画「Echoes of Time」スタート

三富
これも私の推し事業です。アーツセンターあきたがコーディネーションする、美大の社会連携事業の一つです。
藤
どういう経緯でできた事業なの?能代市とは、これまでもいろいろなプロジェクトはやってきているけど。
三富
能代市が市制20周年を迎えることにあわせた事業で、アーツセンターあきたのスタッフと、美大の井上宗則先生と草彅裕先生にご協力をいただいて、提案した企画です。市の広報紙に特別に連載記事をいれさせていただいて、それを最終的には冊子にまとめるという計画です。ただ能代市のいろんなところを切り取って写真を掲載するのではなくて、写真家というプロフェッショナルの視点で、能代の地域資源を切り取って価値づけし、井上先生のテキストで価値が言語化されるという。
藤
教員がいるって重要だよね。宝だよね。
三富
そうですね。そしてこういう提案を受け入れてくださる能代市の懐の広さも。
藤
これはずっと一緒にやってきた賜物ですよ。研究者がいることの素晴らしさがでているよね。ただ同じように写真とテキストを挟み込めばいいということじゃないからね。
12月 秋田市文化創造館が「地域創造大賞」受賞

三富
そして、今年最後のトピックが、文化創造館が地域創造大賞の受賞。
藤
たまにはこういうご褒美も欲しいよね。
三富
そうですね。ただ残念なことに、秋田市の中で全く話題になってないという。
藤
なんだこれ、って感じでしょ。地域創造を知らないと分からないし、文化政策に関心がないと分からない。公立文化施設の顕彰事業に表彰されることの価値は、全国的な視野をもっていないと伝わりにくい。
三富
ちょうど昨日、藤さんの代理で出席した大きな会合で、気合いを入れて報告したんですけど、「シーン」という感じでした。
藤
それでも、こうやって認めていただいた。全国的な視点で見て、文化創造館がどうなのかっていうことがちょっと評価されてるのはすごく嬉しいことだよね。
三富
評価されたポイントは「市民の創意を育んでいること。公立文化施設の新境地を切り拓いた」ということでした。
藤
文化創造館という名称をもった施設は他にもあるけれども、こんなことをやっている施設は意外とないんだよね。建物そのものがよくわからない形しているし。とにかく受賞はありがたいことですね。
三富
1年をおめでたいニュースで締めくくることができました。
番外編

三富
最後に番外編です。藤さんが、なんと12月22日に秋田公立美大での最終講義を終えていたという。
藤
そうなんですよ。
三富
最終講義だということを、誰も知らなかったんじゃないですか?
藤
知らないと思うよ。講評はまだあるけど、講義という意味では、最後だった。
三富
私たちが大学パンフレット用の撮影のためにたまたま授業に入ったら、実はその日が最終講義だということがわかった。
藤
誰にも言ってなかったしね。ただ、3月から展覧会をやらせてもらうじゃないですか。そこに研究室も移動するし、やっぱり実技の人間だから、講義というよりも展示の方がいいかなっていう気がする。終わらない展覧会みたいなことを敢えてやろうかなと思っている。
板書に「ARTS&ROOTS」という文字とその横にイメージを書いているけど、結局説明せずに終わっちゃったね。ルーツを示す、遺伝子と生態系の根っこの2つのイメージ。下のルーツは隠れていて見えないんだけれど、辿ることで可視化することができる。上に広がる未来のルーツは予想できないみたいな話を、以前授業の中でやっていたんですよね。それから時間の捉え方や空間の捉え方とか、つくるモチベーションだとか、特質がどこから来るか、表現は何に繋がるのかみたいな、そういう話をずっとしてきた。お蔭様で楽しく授業させていただきました。
なんか振り返りが1年の振り返りじゃなくて、秋田公立美大での11年の振り返りになりましたね。次にどういう人が入ってくるかというのもまた楽しみですね。物もそうだけれども、更新されること、巡っていくこと、巡りやすい環境をどうつくっていくかが重要ですね。
三富
たしかに滞留していると澱みますもんね。循環が必要ですね。
藤
循環は必要ですよ。若い人たちには、活動の場をつくらなければならないし。