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プログラミングと光と影の競演 わたし+家電=?? 不思議なセッション!

【こどもアートLab2021レポート①】
2021年度のこどもアートLab第1回目は「影の世界でピカピカ・ブィーン」。影の世界?ピカピカ!ブィーン? これまでにない不思議なタイトルのワークショップ。いったいどんなことをしたのでしょう?

秋田公立美術大学が主催する小学生対象のアートスクール「こどもアートLab」。ここは、美術大学の先生や卒業生、秋田県内外で面白い活動をしている人とこどもたちとが出会う場所。新しい価値観を持つ多方面の実践者との遊びのなかで、新しい発見とさまざまな経験と出会い、自ら感じ、自ら考え、実現していくプロセスを体験できる場でありたいと考えています。
2021年度は、前年度から引き続き展開する「NEOびじゅつじゅんびじつ」に加え、4つのワークショップを企画しました。

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レポート① オンラインで一緒に描いて遊んだよ!「どうじにドット オンライン」
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レポート④ 「こどもミュージックLab」耳を澄まして、音を探してセッションしよう♪

身近な電化製品の動きをプログラミングして、
影の世界でピカピカ・ブィーン!

▼https://youtu.be/e7CyZPaooFA

2021年度こどもアートLabの第1回目は「影の世界でピカピカ・ブィーン」。影の世界?ピカピカ!ブィーン?これまでにない不思議なタイトルのワークショップ。聞いただけでわくわくしてきますね。
「影の世界でピカピカ・ブィーン」は、電球や扇風機といった身近な電化製品の動きをプログラミングして、「わたし+家電=不思議な影絵の世界」のセッションを楽しむというもの。‥‥と言ってもいまいちピンときません・・よね・・。

今回のLabリーダーは、企画とプログラミングを担当する阿部由布子さん(秋田公立美術大学助教)と、影絵の世界をつくり出す池田聖子さん(色々美術研究所代表)。ふたりのちょっと不思議なワークショップに参加してくれたのは、小学3年生から5年生までの男子と女子6人です。新型コロナウィルス感染症の拡大状況から、第1回目は参加者数を縮小して開催。会場となったにぎわい交流館AUにて、まずはプログラミングの勉強です。

Labリーダーの池田聖子さん(左)と阿部由布子さん(右)。机の上には阿部さんが電化製品を制御するようにプログラミングした小さなコンピューターと、クリップライト
コンピューターに電源タップをつないでクリップライトのコンセントを挿し込みます

プログラミング制御を体験

目の前にあるのは、Labリーダーの阿部さんが電化製品を制御できるようにプログラミングしてきたコンピューター。これに電源タップをつないで、電化製品のコンセントを挿し込みます。パソコンをつないでプログラムコードを入力すればスイッチを入れたり切ったりできて、その間隔を指示することもできます。

ライトを点灯させたり、消したり。点灯している間に影絵をして遊んだり、扇風機やドライヤーで風を吹かせてみたり。これをうまく理解できれば不思議な動きを展開することが可能なはず・・。みんなで実際にプログラミング制御を体験してみます。電化製品の動きをよく観察して確かめて、どんな動きがいいか、どんなタイミングがいいかをイメージしていきます。

サーキュレーターでなにやら飛ばしていますね
ドライヤーを6秒オンにして、4秒オフにするよう記憶させたようです

机の上にはクリップライトやサーキュレーター、扇風機、ドライヤーといった電化製品のほか、折り紙や卵のパック、風鈴、紙テープ、テッシュ、毛糸などの小道具も。自分で持ってきた傘やスマートフォンも影絵遊びに使えそう。
光と影と動きを想像しながら工作をしていきます。卵のパックに色を塗ってみたり、紙テープやテッシュなどを細かく裂いたり。それぞれが短い時間のなかで集中して手を動かしました。

タイミングを合わせて影絵遊び

グループごとにストーリーをつくって、影と光と動きの組み合わせを考えて楽譜をつくります。楽譜に書くのは音符ではなく・・「電化製品の動き」と「体の動き」の組み合わせです。
ライトは何秒点いて、何秒消えるのか。その時、どんな動きをするのか。
明かりが点いている時間に合わせて影絵を映さなければなりません。そのタイミングが、難しい!

影絵だと、風が吹くと目に見えない物体が現れて動いているようにも見えます。動きや色を想像しながらオン・オフを組み合わせます
楽譜には「電話する」「腕を組む」「空を見上げる」…??

わたし+家電=不思議な影絵の世界!

いよいよ家族を招いて、影絵の世界の発表の時間になりました。たった2時間という短い時間のなかで、プログラミングの勉強に工作に練習に発表に・・。それぞれがストーリーを組み立てて、電化製品のオンとオフを繰り返しながら小道具を動かしていきます。観客には、どんなふうに見えるでしょうか・・

光のなかでゆらゆらと体を回転させたり、風で飛ばした紙吹雪と戯れてみたり
ブイーンという音とともに、毛糸や卵パックが風になびくのを映しました
スマホで自撮りしているのかな?

美術を楽しむこと、その延長線上で
プログラミングを使った表現を楽しむ

参加者や保護者からは「学校では経験できないことができて良かった」「こども同士、協力しながら行っていた」「いろいろなハプニングや改良が楽しかった」という感想や、「自分たちで考えたものをかたちにする難しさ、工夫することを学べたのではないか」「発表を見る側にはなかなか伝わりづらかった」という意見も。

工作を担当した池田さんは「こどもたちは、短い時間のなかで物語をつくって演じながら、それぞれの空間をつくってくれました。イメージしきれずに動かしていた部分もきっと多かったと思いますが、いろいろな感覚を結びつけていく訓練になったかなと思います。プログラミングすることによって、いろいろな表現をすることができます。このワークショップで何か引っかかりができて、今後の興味・関心につなげていってくれるとうれしいです」。
プログラミングを担当した阿部さんは、ワークショップを振り返りながら企画の意図やメディアートについて説明してくれました。
「『美術』というと絵や彫刻をつくる伝統的な営みのことと思われがちですが、『美術』の様式やテーマは、その時代ごとに、社会の要請に応じて新たにつくり出して構わないものです。私が専攻している『メディアアート』は、現代に生きる私たちが生活インフラとしてお世話になっているテクノロジーやニュー・メディアによって『美術』をつくり出すこころみです。普段、無意識に用いているテクノロジーやニュー・メディアが、この先の社会にどのような可能性をもたらすか、批評的な視点で見つめ直す糸口を私たちに与えてくれる『メディアアート』に、今回のワークショップをきっかけに興味を持ってくれる参加者がいたら、嬉しいですね」

最後にコーディネーターの有馬寛子(アーツセンターあきた)から。
「今回のワークショップでは、家や学校では体験できないような機材を使ったプログラミングで影絵の時間を楽しみました。短い時間ではありましたが、初めて会ったメンバー同士で考えたものをかたちにするため、試行錯誤しながら難しい部分も工夫して取り組み、保護者の方にも温かく見守っていただきました。
こどもたちの感想からは、ハプニングや改良の時間も楽しんだり、知恵を出し合うことで仲も深まったりと、この時間を楽しんでもらえたことが伝わってきました。プログラミングと影絵を組み合わせるという実験的なワークショップによって、大人の想像を超えるこどもたちの発想が溢れる1日になったと思います」

わたし+家電の不思議なワークショップ。プログラミングと工作による影絵の世界には、たくさんの可能性がありました。

Information

第1回「影の世界でピカピカ・ブィーン」

ワークショップは終了しました
プレスリリース
電球や扇風機などの身近な電化製品をプログラミングして、わたし+家電=ふしぎな影絵の世界 のセッションを楽しもう! Labリーダーは、アーティスト/キュレーターの阿部由布子(秋田公立美術大学助教)と美術教室講師の池田聖子(色々美術研究所主宰)です。
●日  時:9月23日(木祝)10:00〜12:00(受付9:45〜)
●定  員:6名(先着順)
●対  象:小学校3〜6年生
●参  加  費:1,000円
●開催場所:秋田市にぎわい交流館AU(秋田市中通1丁目4-1)3階ミュージック工房1
●申込期限:9月21日(火)17:00
※先着順のため早めに募集を終了する場合があります。

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた

高橋ともみ

秋田県生まれ。博物館・新聞社・制作会社等に勤務後、フリーランス。取材・編集・執筆をしながら秋田でのんびり暮らす。2016年秋田県立美術館学芸員、2018年からアーツセンターあきたで秋田公立美術大学関連の展覧会企画、編集・広報を担当。ももさだ界隈で引き取った猫と暮らしています。

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