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2023年度 NEOびじゅつじゅんびしつ 「プログラミングで自分の作った車を動かしたい」

こどもたちの「やりたいこと」を後押しする「NEOびじゅつじゅんびしつ」(秋田公立美術大学主催)。2023年度は5人の挑戦を応援しました。「プログラミングで自分の作った車を動かしたい」と挑戦したKさんの詳細をレポートします。

「NEOびじゅつじゅんびしつ」(通称NEOび)は、アーティスト・柚木恵介さんによるプログラムです。柚木さんはこれまで神奈川県鎌倉市と長野県上田市を舞台に、こどもたちが自ら多様な個性と関わりながらモノやコトをつくり出す活動を展開してきました。

NEOびでは、こどもたちが自分1人の力ではもう一歩踏み出せない「やりたいこと」を、大人が「ふいご隊」(応援スタッフ)となって背中を押します。
「ふいご」とは火をつけたり火力を強めたりする時に風を送る道具のこと。ふいご隊はこどもたちのやる気の火種に風を送り込んで、燃え盛る火になるよう真剣に応援します。隊長は柚木さんです。

2020〜2022年度に小学生を対象としてグループで実施していたNEOびですが、本年度は少し対象の年齢を上げ、挑戦者自身だけで自分の「やりたいこと」の実現を目指しました。こどもたち自らが考え、相談や工夫をしながら壁を乗り越えていく、そのクリエイティビティを後押しします。

概要についてはまとめたレポートもご覧ください。

挑戦者の1人、Kさんのやりたいことは「プログラミングで自分の作った車を動かしたい」。
プログラミングに興味があり、勉強もしているというKさん。果たして動かすことはできるのか。
Kさんの詳細をレポートします!

現実でロボットを動かしてみたい!

Kさんは当初、やりたいことを「自動で動くロボットをつくりたい」として応募していました。
個別相談会で挑戦の理由を聞くと、プログラミングに興味があって学んでいると話すKさん。これまではキットを使って画面上の2D、3Dの世界でしか動かしたことがないので、今回の挑戦では現実で動くロボットを作って動かしたいという思いがあるとのことです。
Kさんの熱意を受け、ふいご隊は一緒に学びながら挑戦する覚悟を決めました。

どんなロボットを作りたいのか、Kさんにはいろいろなイメージがあるようです。Kさんには、活動日までにどんなロボットを作りたいのか、そのロボットには何をさせたいのか考えてもらいます。

つくりたいものには何が必要か

活動初日は、Kさんの頭の中に浮かんでいることを教えてもらうことから始まりました。「自分で作った車を動かして、障害物にぶつからずに止まるようにしたい」「車はリモコンで動かしたい」。当初は漠然としたロボットだったイメージが、プログラミングによって制御できるミニカーに方針が固まってきました。話しているうちに、やってみたいことが具体的に見えてきたようです。

2日目の活動日には、実際に作るためには何が必要か、どのように進めるかを考えました。
「動く車」を作るためには、まず車のパーツやマイコンボード(基板)が必要で、その後動かすためにプログラミングで「動く」「止まる」などの設定をしなければいけないようです。やることはたくさんあります。
報告会までに車を完成させるため、Kさんが一人でできること、ふいご隊と一緒にやることなどを確認します。その上で、ふいご隊はプログラミングの知識がないため、詳しい人に教えてもらおうと決めました。

Kさんは早速、動かす車の土台となるパーツを買いに行き、組み立て始めました。ですが、時間切れ。途中で終了し、残りは家で作ってくることになりました。

アドバイスをもらって方針転換

次の活動日、プログラミングに詳しそうな人にふいご隊と一緒に聞きにいくことにしました。相談先は秋田工業高等専門学校講師の佐藤貴紀先生です。

初めて足を踏み入れた高等専門学校の校内にワクワクキョロキョロしているのは、なぜかふいご隊。Kさんは先生の研究室を見つけてどんどん進んでいきます。初対面のKさんを優しく迎え入れてくれた佐藤先生。プログラミングは本当の専門ではないとのことでしたが、Kさんから話を聞いたり、車のパーツを見たりしてアドバイスをくれました。

佐藤先生からのアドバイスを受け、Kさんは実際に試してみることに。
しかし、ここで問題が発生します。
なんと、今あるモーターやパーツだけでは車を止めることができなかったようです。

そのことに気付いたKさん。パーツを買い足しに行くのも難しそう。本当は「動いて止まる車」を目指したかったのですが、ここでゴールを「障害物にぶつかる前にLEDランプを点灯させる車」に変更しました。問題があっても、柔軟に対応していきます。

また、動かす要となる基板にプログラミングを書き込む段階で、もう一つ大きな壁がありました。言語です。
Kさんがこれまで学んでいたプログラミングは日本語で行っていました。ですが、今回は英語で書く必要があるようです。
ここはふいご隊の出番です。

Kさんは、車を動かしたりランプを点灯させたりするにはどんな命令を書き込めば良いのかを考えて理解し、ふいご隊が翻訳して代わりに入力することにします。障害物までのセンサーの反応距離などは、Kさん自身が変更しました。

試行錯誤の末、ようやくプログラミングが完了。
車を動かす命令が書き込まれた基板を、Kさんが作った車に載せて、いよいよ走らせてみます。

Kさんもふいご隊も緊張の瞬間…。
無事に車は走り出し、障害物にぶつかる前にLEDライトが点灯しました!

報告会で完成品を披露

Kさんは報告会までにさらに自宅で調整をしてきた様子。報告会には改良した車を持ってきて、障害物にぶつかる前にLEDランプが点灯するところをみんなの前で披露してくれました。今後、プログラムを変えたり、カスタマイズしてどんどんパワーアップしていくことでしょう。

やりたいことがある挑戦者を待っています!

NEOびじゅつじゅんびしつは美術大学のプロジェクトですが、ものを作ったり、絵を描くこと以外の挑戦も大歓迎です。「ふいご隊」は子どもたちと学び合い、一緒に寄り添い、「やりたいこと」を成し遂げるために全力でサポートします。

やってみたいとずっと思っていることはありませんか?
2024年の募集は6月ごろ開始予定です。
あなたの挑戦を待っています!

■2023年度NEOびじゅつじゅんびしつ 挑戦者レポート一覧

▶︎「焚き火で料理をしたい」
▶︎「ウクレレが上手くなりたい」
▶︎「大きなキャンバスに絵を描きたい」
▶︎「プログラミングで自分の作った車を動かしたい」
▶︎「山に登りたい」

Information

クリエイトブラボー NEOびじゅつじゅんびしつ

2023年度の募集は終了しました

■事業名:クリエイトブラボー NEOびじゅつじゅんびしつ
■対象:秋田の小中学校に通う11-15才
■募集内容:自分が「やってみたいこと」
■担当教員:柚木恵介 (秋田公立美術大学ものづくりデザイン准教授)
■主  催:秋田公立美術大学
■企画運営:NPO法人アーツセンターあきた
■お問い合わせ:NPO法人アーツセンターあきた (担当:武藤、小野)
[TEL]018-888-8137 (受付時間平日9:00-17:00)
[E-mail]createbravo@artscenter-akita.jp
[WEB]www.artscenter-akita.jp

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Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた

武藤沙智子

秋田県生まれ。大学卒業後、航空会社系旅行会社で営業・企画・販売推進などの業務に従事。47都道府県を巡る旅好き。
奈良、宮城、大阪、千葉、埼玉と移り住み、2019年に秋田市の地域おこし協力隊 移住定住コーディネーターへの応募をきっかけに帰秋。退任後は民間企業を経て、2022年から現職。あきた発酵伝道師一期生。現在は発酵食品、伝統食、伝統工芸に興味を持っています。

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