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2023年度 NEOびじゅつじゅんびしつ 「山に登りたい」

こどもたちの「やりたいこと」を後押しする「NEOびじゅつじゅんびしつ」(秋田公立美術大学主催)。2023年度は5人の挑戦を応援しました。「山に登りたい」と挑戦したRさんの詳細をレポートします。

「NEOびじゅつじゅんびしつ」(通称NEOび)は、アーティスト・柚木恵介さんによるプログラムです。柚木さんはこれまで神奈川県鎌倉市と長野県上田市を舞台に、こどもたちが自ら多様な個性と関わりながらモノやコトをつくり出す活動を展開してきました。

NEOびでは、こどもたちが自分1人の力ではもう一歩踏み出せない「やりたいこと」を、大人が「ふいご隊」(応援スタッフ)となって背中を押します。
「ふいご」とは火をつけたり火力を強めたりする時に風を送る道具のこと。ふいご隊はこどもたちのやる気の火種に風を送り込んで、燃え盛る火になるよう真剣に応援します。隊長は柚木さんです。

2020〜2022年度に小学生を対象としてグループで実施していたNEOびですが、本年度は少し対象の年齢を上げ、挑戦者自身だけで自分の「やりたいこと」の実現を目指しました。こどもたち自らが考え、相談や工夫をしながら壁を乗り越えていく、そのクリエイティビティを後押しします。

「NEOびじゅつじゅんびしつ」関連記事一覧

概要についてはまとめたレポートもご覧ください。

挑戦者の1人、Rさんのやりたいことは「山に登りたい」。
ただやりたいという思いを胸に登った山から見えた景色はどうだったのでしょうか。
Rさんの詳細をレポートします!

「唐突に山に登りたくなった」

「唐突に山に登りたくなった」と応募をしてくれたRさん。
実は昨年の「ロケットを飛ばしたい」という夢の発案者です。今年は全く違うやりたいことを見つけて、挑戦してくれました。

まずは山に登るために事前打ち合わせです。
個別相談会で、Rさんが挙げた希望の山は「太平山」でした。しかし、7月の大雨の影響で登山道が崩れてしまったようです。どこの山を登るか。いくつか候補をあげて考え、今回は秋田駒ヶ岳へ登ることに決めました。

登山に必要な装備の確認をし、登山届は当日までにRさんが準備します。

山までバスと電車でふたり旅

はじめは暑い時期を避けて計画していましたが、天候不良などで延期となり、季節が変わって装備も増えた秋にやっと秋田駒ヶ岳へ挑みます。

当日朝、Rさんと柚木隊長は2人だけで秋田駅から出発しました。電車とバスを乗り継いで登山口である駒ヶ岳八合目に向かいます。
電車とバスのスケジュールはRさんが事前に調べています。柚木隊長を先導する形で、大曲駅で電車を乗り換え、田沢湖駅へ到着。その後、さらにバスに乗り換えます。

途中の「アルパこまくさ」でRさんの保護者とふいご隊の2人がバスに乗り込む形で合流し、一緒に八合目へ向かいました。

登山開始!山登りのリーダーに大切なこととは

八合目の登山口に到着し、いよいよ山に登ります。
まずは、安全のために、近くの避難小屋で柚木隊長から装備のチェックとパッキングの仕方(リュックへの荷物の入れ方)を教わります。登山届を提出して、いざ出発の時です。
Rさんを先頭に、頂上の男女岳を目指して山登りがスタートしました。

歩き出して少し経つと二手に分かれる分岐点があり、立ち止まりました。Rさんはお知らせの看板を読み、地図を出してルートを確認。予定していた右側の新道コースへ進みます。

途中、標高1443mの片倉岳展望台で休憩です。灰色の空ではありましたが、遠くまで広がる山の景色を楽しみました。

日頃、運動部で身体を鍛えているRさん。あふれ出る体力でどんどん先に進んでいきます。
ふいご隊は置いていかれないように一生懸命ついていきますが、なかなか大変。
見兼ねた柚木隊長からRさんに、山登りのパーティーにおけるリーダーの役割についてアドバイスがありました。一緒に登るメンバーの疲労度やペースをしっかり見ておくこと。自分のペースでなく、遅いメンバーのペースに合わせること。
そこからは後ろの様子を気にしながら、一緒に登ってくれました。

なんだか雲行きがあやしくなって…

阿弥陀池に着いたあたりで風が強くなり、雨がぱらついてきました。みるみるうちに付近はどんどん霧で真っ白に。阿弥陀池の避難小屋に着いた頃には視界が悪くなり、目指す頂上の男女岳は見えないほどになってしまいました。

天気予報によると、この後は天候が崩れてくるとのこと。柚木隊長の判断で、今回は男女岳の登頂は諦め、ここがゴールとなりました。

ここまでの所要時間はなんと60分!
地図上ではおよそ100分とされており、すごい早いペースで登ってきました。

Rさんが登山に集中して挑戦ができるように往路は少し距離を取って後ろから登ってきた保護者も、復路は安全面を考慮して合流。本格的に天候が崩れてくる前に一緒に急いで下山します。

登山口である八合目の避難所に戻ってきた頃には雨足が強くなり、避難所に入った途端、豪雨になりました。
山の天気は変わりやすく、無理は禁物。今回のゴールの変更はとても良い判断でした。

山の楽しみといえば

下山はしましたが、まだまだ楽しみが残っています。山でのごはんです!
本当ならば山の上からの景色を楽しみながら食べる予定でしたが、避難所の2階を借りて昼食を取ることにしました。
柚木隊長が用意してくれたメニューは、隊長が山登りの時によく作るという「特製ハンバーグ丼」です。

水やお湯を入れるだけで食べられるアルファ米に、レトルトのハンバーグとパスタソースをかけて完成。疲れた身体に熱々のご飯は最高のご馳走で、Rさんはあっという間に完食しました。

修了メダルを授与

Rさんの登山の挑戦は、天候不良などで延期をしたため、実は「NEOびじゅつじゅんびしつ」プログラムの最後となる報告会の日までには実行できませんでした。そのため、報告会で挑戦者全員に配られたメダルは、登山挑戦の日までふいご隊が預かっていました。

下山後、預かっていたメダルが柚木隊長からRさんへ手渡されます。Rさんはメダルを手に、やりきった晴れやかな表情を見せてくれました。

やりたいことがある挑戦者を待っています!

NEOびじゅつじゅんびしつは美術大学のプロジェクトですが、ものを作ったり、絵を描くこと以外の挑戦も大歓迎です。「ふいご隊」はこどもたちと学び合い、一緒に寄り添い、「やりたいこと」を成し遂げるために全力でサポートします。

やってみたいとずっと思っていることはありませんか?
2024年の募集は6月ごろ開始予定です。
あなたの挑戦を待っています!

■2023年度NEOびじゅつじゅんびしつ 挑戦者レポート一覧

▶︎「焚き火で料理をしたい」
▶︎「ウクレレが上手くなりたい」
▶︎「大きなキャンバスに絵を描きたい」
▶︎「プログラミングで自分の作った車を動かしたい」
▶︎「山に登りたい」

Information

クリエイトブラボー NEOびじゅつじゅんびしつ

2023年度の募集は終了しました

■事業名:クリエイトブラボー NEOびじゅつじゅんびしつ
■対象:秋田の小中学校に通う11-15才
■募集内容:自分が「やってみたいこと」
■担当教員:柚木恵介 (秋田公立美術大学ものづくりデザイン准教授)
■主  催:秋田公立美術大学
■企画運営:NPO法人アーツセンターあきた
■お問い合わせ:NPO法人アーツセンターあきた (担当:武藤、小野)
[TEL]018-888-8137 (受付時間平日9:00-17:00)
[E-mail]createbravo@artscenter-akita.jp
[WEB]www.artscenter-akita.jp

NEOびじゅつじゅんびしつFAQ
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Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた

武藤沙智子

秋田県生まれ。大学卒業後、航空会社系旅行会社で営業・企画・販売推進などの業務に従事。47都道府県を巡る旅好き。
奈良、宮城、大阪、千葉、埼玉と移り住み、2019年に秋田市の地域おこし協力隊 移住定住コーディネーターへの応募をきっかけに帰秋。退任後は民間企業を経て、2022年から現職。あきた発酵伝道師一期生。現在は発酵食品、伝統食、伝統工芸に興味を持っています。

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